【2024年度】ゲームアイデアコンテストの結果発表

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高橋 晋平
当コンテストの審査委員長を務めている、おもちゃクリエーターの高橋 晋平と申します。

無事にゲームアイデアコンテスト2024が終了しましたので、審査結果の発表をしていきます。

全体の講評

毎年言っている気がしますが、今年は特に応募作品のレベルが上がり、過去最高のクオリティの作品が最終審査に並びました。

特にグランプリ作品「恋愛戦略バトルAidjya」はぜひとも最終調整をして商品化してほしいと感じましたし、次点以降の「LOOKME」「ネコが屋根の上で月を見てる」「STELLA」は、それぞれ現時点の課題をクリアして調整すれば商品化できるレベルだと思います。商品化の可能性をグッと感じられる作品が4つもあったことは驚きでした。

レベルが高かっただけに、講評にも熱が入ってしまいますが、来年度からはいよいよ「商品化の可能性」まで考えられている作品が増えてほしいなと、期待が膨らんでいます。このコンテストは、応募作品を商品化して広く世に届け、多くの人に楽しさを提供する段階に来たと思います(実は今、過去作品の商品化の検討も進んでいるところです!)。

商品化できる作品の条件は、お金を出してでも遊んでみたいと思ってくれる人がいるかどうかです。世の中の1人に、「このゲームを買って手に入れて、周りの人と遊んでみたい」と思わせることができれば、そのゲームは売れていきます。そのためには、マーケティングなどを学ぶことも大切かもしれませんが、やはり自分のこだわりを貫くことが一番大事です。ありきたりなものではなく、他のゲームにないこだわりポイントがひとつあるかどうか。引き続き全国の学生さんたちに、自分が最高に面白いと思うゲームのアイデアを考えてみて欲しいです。

来年も楽しみにしています!

【2024年度 グランプリ】 アイジャ制作チームさん

応募者名:アイジャ制作チームさん

作品名:「恋愛戦略バトル Aidjya」
学校名:学校法人 日本教育財団 HAL大阪

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作品の解説動画:こちら

過去6年間のゲームアイデアコンテストにおいて最終審査に残った作品の中で、ゲームルールの面白さが1番でした。何回も繰り返し遊びたいと思いました。遊び終えた後に「もう1回遊びたい!」と思わせられるのが良いアナログゲームですが、その条件を満たすのはなかなか難しいものです。テーマからは想像していなかったほど奥深いルールは、ドイツゲームさながらによくできていると感じました。

先輩を呼び出すなど、他のみんなを出し抜いて告白をキメるという設定が良く、リスクを背負って告白にチャレンジし、成功させたときの嬉しさには笑ってしまったほどでした。また、好感度を増やして(先輩に好きになってもらって)勝つ方法も戦略的に考えられるという点が最高で、現実の恋愛にありそうで唸らされました。
ストーリー設定の面白さ、ボードのデザイン、ルールの秀逸さが噛み合った素晴らしい作品だと思います。

最後の課題は、「この面白さを、キャッチコピー(ゲーム名?)や、プレイ動画などで、どこまで初見の人に伝えられるか」かなと思います。マーケティングも勉強して、ぜひ、商品化を実現させてほしいです!

【2024年度 第2位】一言拓海さん

応募者名:一言拓海さん

作品名:「LOOKME」
学校名:千葉工業大学

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将棋・チェスのような論理的対戦ゲームはこれまでこのコンテストでもいくつか入賞作品がありましたが、「目を合わせたら勝ち」という設定は斬新でした。企画書、デザイン、作品紹介の動画、サムネイルやプレゼンなど、伝え方が特別に素晴らしかったです。

実際にプレイしてみて感じたのが、先手後手の戦い方に非対称性があることです。作り手からすると先攻後攻の勝率は平等なのかもしれませんが、初めてプレイする人はおそらく、後手が防御寄りの動きを余儀なくされ先に攻めていけないと感じることが多いのではないでしょうか。少しでも「後手が不利かもしれない」などと疑念が浮かぶゲームは、徐々に遊ばれなくなってしまう恐れも抱えます。

運要素のない論理的対戦ゲームは、できる限り公平な条件で対戦できるようなルール調整をする必要があると思います。例えば先手の最初の行動力を下げるとか、ブロックの使い方の条件設定をするとか? もし先手と後手の条件が不平等であれば「不平等である」という世界観を設定してユーザーにきちんと宣言する方法もあると思います。
このゲームはいくつかのブラッシュアップで劇的に変わると思うので、最高の作品になるようにあと一歩、期待したいです!

【2024年度 第3位】 かがみさん

応募者名:かがみさん

作品名:「ネコが屋根の上で月を見てる」
学校名:国立大学法人 大阪大学

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幼稚園児から遊べて、言語化表現の勉強にもなるゲームだと思いました。コミュニケーションが苦手な方のコミュニケーションツールにもなり、遊べる年齢の幅が広いところがこのゲームの長所ですね。
ゲーム開発においては、興味を引くゲーム名(タイトル)をつけることがとても重要ですが、そこが秀逸で、「句をよむように絵札を表現するんだろうな。遊んだら楽しそう!」と期待感が高まりました。線画のイラストテイストにも個性があり良いと思います。

実際にプレイしてみると、句をよむというよりは、どうしても絵を詳細に説明するような言い方になってしまうのと、意外と「どの絵札かな?」と迷うことが少なく、やや作業的であると感じました。もちろんそれは小さい子が遊びやすいわかりやすさという強みにつながるのですが、小さい子中心であれば、昔ながらの「スピーカー」などのイラストは小さい子向けにわかりやすいものにしても良いかもしれないし、親子向けにするなら大人も本気で楽しめてこそ良い商品になります。大人も楽しめるようにするなら、例えばもっとどのカードか迷うような絵にして、拡張ルールでは「読み手は五・七・五で読む」など? Dixitの絵札くらい「どれかな~?」と迷わせることで面白さがアップする可能性もあります。

このゲームを一番遊んで欲しい層は誰でしょう?
それを明確にすると、イラストをどうブラッシュアップすればいいかが見えてきて、商品化の実現にも大きく近づくのではないかと思います。秀逸な「ゲーム名」から感じさせる期待感を、さらに超える面白さになるよう、イラストをあと一歩工夫してみてもいいのではないかと思いました。

【2024年度 マーブル賞】 服部裕汰朗さん

応募者名:服部裕汰朗さん

作品名:「STELLA」
学校名:東海国立大学機構 岐阜大学

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初見では、昔からよくある輪ゴムで絵を作る伝言ゲームかな、と想像したのですが、プレイしてみると思ったより秀逸なルールであると分かりました。相手が作った絵にも回答することができるルールがゲームを飛躍的に面白くしています。相手にわかってしまうと点数を取られるので、出題側はどれくらい伝えるのか。回答側は質問するのか答えを当てに行くのか。ドキドキしました。シンプルなのに、思った以上に新しい遊びになっていて、素晴らしいなと思いました。

ここからは参考程度の意見になるのですが、もしもこの作品を商品化するとしたら? と考えると、もっと価値を上げる方法を考えなくてはならなくなります。ボードと大量の輪ゴムなどがセット内容に入ると、思った以上に価格が高い商品になります。それでも買ってもらえるようにゲームの価値を高めるには、どうするか。もちろん商品化を目指すか目指さないかは作者の自由ですが、もし目指すとなったら、あと一歩どうすればこのゲームが良いものになるか、いろいろな人と遊んで意見を聞きながら考えてみると、さらにいいものになるかもしれません。

【2024年度 特別賞】モンハン同好会さん

応募者名:モンハン同好会さん

作品名:「ステルスダッシュ」
学校名:学校法人 日本教育財団 HAL東京

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世界観設定や見た目でワクワクし、「遊んでみたい!」と思いました。特にコマが絵画を背負うようになっている仕様が可愛らしく、グッズとしても魅力があります。

ルールで大きく改善の余地があると感じた点が2か所あります。1つは、ステルスで移動するマスの指定が「記憶と自己申告だけ」という点。ゲームは誰もが公平性を疑いなく感じられないといけないので、「もしかしたら嘘をつくかも」と思わせるリスクはなくしておいた方が良いです。
もう1つがお宝を奪えるかどうかがサイコロの出目勝負であるところ。このゲームは作戦を成功させて勝つのが楽しいタイプのゲームなので、完全に運で決まる要素はない方がいいと思います。「サイコロの出目がずっと悪かった!」となると、ストレスになってしまうことがあるかもしれません。

プレイ時間が長かったり、ルールが多かったりするゲームには、それに見合う圧倒的な面白さが必要です。商品化されるゲームは、実況動画を見ると面白さが伝わるものですが、このゲームはおそらく動画をどれだけうまく撮っても、そこから面白さを伝えることがまだ難しいように感じました。
戦略と運のバランスを整え、いいテンポ感のゲームにすると飛躍的によくなると思います!