
全体の講評
ここ数年毎年言っているようですが、今年も最終審査に過去最高レベルの作品が揃い、興奮しました。実際遊んでもどれも面白かったし、ものづくりのデザインもちゃんと考えられていて素晴らしかったです。
全体的に応募作品のクオリティの差が縮まっているように感じましたし、最終審査に残った5作品はすべて、ゲームバランスの調整をさらに丁寧に行うと充分に商品化できるレベルだと感じました。
だからこそ、今大会は最終審査の動画プレゼンで、ゲームを全く知らない人にも内容の面白さが伝わったかどうか、そして何より熱意が伝わったかどうかがひとつの重要な審査ポイントになったと感じています。面白いだけでなく、それをどう「面白そう」に伝えて、ユーザーにゲームを手に取ってもらい、一緒に遊ぶ人に声をかけさせるか。実際に遊んでもらえないゲームは人に楽しさを提供できないので、「伝え方」はとても大切です。
世の中のゲーム作品もどんどん増えているので、来年度のコンテストでは、「新しい面白さ」が求められてくると思います。
次回も楽しみにしています!
【2025年度 グランプリ】 GALPaさん
応募者名:GALPaさん
作品名:「だるまさんの庭」
学校名:学校法人 日本教育財団 HAL東京

作品の詳細:こちら
作品の解説動画:こちら
ゲームの面白さ、プレゼン動画ともに満場一致で最高得点でした。
雑なゲームだと遊んでいる途中で正直「もう飽きてきたな……」と感じたり、消化試合になったりすることもあるのですが、このゲームは4人で10ターン、決着まで盛り上がりを加速させながら遊ぶことができました。「後半に向かうにつれて盛り上がっていく」のはゲームにおいて大切な要素であり、これは来年以降の応募者の方々にも意識してほしいポイントだと思います。多くのゲームをプレイする審査会でも、このゲームをすぐにもう1回別の戦略を試して遊びたい! と思ったくらいでした。先に逃げ切って勝つのを狙うか、終了ギリギリまで残ってリスクも取るのかの駆け引き、面白いですね~!目立ってしまったプレイヤーが狙われる心理戦も。
このゲームのすごさは、真剣な頭脳戦もできるけど、何も考えなくてもできるところですね。子どもから大人まで楽しめる、本当に間口が広いゲームだと思います。
そして最終の動画プレゼンが群を抜いて素晴らしかったです。デモプレイ映像が長めでも飽きずに見られました。プレイヤーの皆様がはしゃぎながら遊んでいて、その面白さがこちらにも伝わってきました。熱意も圧倒的。自信が見えました。
唯一気になったのが、4人で遊んだときに1番目のプレイヤーから4番目のプレイヤーまで、有利不利はないのかどうか。遊ぶお客さんに「先手が不利じゃない?」などと疑わせないか。ここを最後研究してほしいです。応援しています!
【2025年度 第2位】異常着装さん
応募者名:異常着装さん
作品名:「着こなしバズるし!!」
学校名:学校法人 日本教育財団 HAL大阪

作品の詳細:こちら
作品の解説動画:こちら
見た目以上にゲームとしての新しさを感じました。世界観もルールも新しいことに挑戦しているのに好感が持てました。似ているゲームが溢れる現代で、新しさが垣間見えるだけでポイントは高いです。
もう少しゲームバランスを詰めて、終盤に近付くにつれどんどん盛り上がる駆け引き要素がもう少し作り出せたらさらに面白くなると思うのですが、ここから完成形に向かっていける土台は充分。手札を増やすタイミングなど細かい点も良かったし、サイコロが2つなのも1つとは全然違う意味を持っているので、よく考えられています。
最終のプレゼン動画も良かったです。ゲームの説明も伝わったし、遊んでいるシーンの楽しさも伝わりました。
以下、今後に向けた感想コメントを2つ。
1つ目は、「着こなしでバズらせる」というテーマに無理はないか。審査会で複数人からコメントがあったのですが、着こなしが気候に合ってたらバズる、は納得感が弱い気がします。ゲームの世界観設定は、「だからこうなのか!」っていう整合性が思った以上に大事で、そこが美しいゲームは面白そうに思われて売れる傾向があります。もしかしたら「バズらせる」ではなく、気温に合ったベストコーデをしたら勝ち、でもいいのかもしれないという仮説が浮かびました(TwiXっていうワードは好きでしたが)。
2つ目は、それでもあくまで「バズらせる」という世界観で行くなら、得点チップをいいね数とかフォロワー数を表すなどのデザインにしてほしかったです。せっかく凝った作り物がそろっているのに、チップだけありものでプレゼンされたのが残念でした。最後のこだわりが大切だと思います。最高のゲームとして完成するのを楽しみにしています!
【2025年度 第3位】 あべこべワード委員会さん
応募者名:あべこべワード委員会さん
作品名:「あべこべワード」
学校名:学校法人 日本教育財団 HAL名古屋

作品の詳細:こちら
作品の解説動画:こちら
面白かった! テストプレイでも審査員全員盛り上がりました、繰り返し遊びたくもなりました。回答者の得る情報、出題者1人1人の得る情報がバラバラなことで、答えを考えているときに全員ワクワクすという構造が面白くて、僕たちの間でもいろいろな会話が飛び交いました。
1位、2位との差は「新しさ」だったかなと。これからのアナログゲーム開発の宿命でもありますが、ひらがなで言葉を構成するとか、ヒントを出して答えを当てさせるとか、このタイプのゲームが増え続けている現状があります。例えば最初にどうしても、ドイツ年間ゲーム大賞1位を獲った有名ゲーム「ジャスト・ワン」を思い出してしまいました。お題カードも得点の付け方も割と似ていて、「あべこべ」というこのゲームの素晴らしいメインコンセプトがもったいなく感じてしまいました。
オリジナリティはいくらでも出せます。このゲームだからこそ、この決着方法で、子どもたちと遊べるモード、大人がガチで遊べるモードなど幅を広げるなど……アイデア次第で誰にも「あれに似てる」なんて言わせない唯一無二のゲームにできる気がします。チャレンジ精神をもってあと一歩、自信をもって世界に出せるゲームにする方法を考えてみてほしいです。
そして、遊びが本当に面白かっただけにプレゼン動画がちょっと残念でした。ルールはわかりやすかったのですが、審査会でもめちゃくちゃ盛り上がって大騒ぎしていろいろな会話が飛び交ったので、そういう楽しそうな雰囲気を感じ取れて、「絶対面白い、遊んでみたい!」と初見の人にも思わせるプレゼンを見せてほしかったです。
今後このゲームがまだ進化するのかどうか、楽しみにしています!
【2025年度 マーブル賞】 石橋チームさん
応募者名:石橋チームさん
作品名:「NOTオン眉!垢抜け前髪散髪ゲーム」
学校名:学校法人 日本教育財団 HAL大阪

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作品の解説動画:こちら
見たことない新しいアイデア! 内容物をハサミで毎回切ってしまうのに、製品として成立していると思います。箱も可愛いし、髪の毛パーツがなくなったら例えばWebサイトからプリントアウトできるようにしておけば商品化も充分に狙えるかと!
そんな中、やはりゲームと名乗る以上は、ルールがやや曖昧かなと感じました。オン眉になってしまったらアウトなのは明瞭で良いのですが、そうじゃない場合はセンスで話し合って勝敗を競うというのはちょっと惜しいなと思いました。このゲームはそれで良いのかをもう一度自問自答してみてほしいです。もちろんその勝利条件もNGではないのですが、例えばオン眉になっていないギリギリをついたら勝ちとか、散髪され役が1人決まっていてその人が判定するとか、選択肢はいろいろとあるかなと思います。
なぜルールの厳密性にこだわるのがいいと思うか。それはこのゲームが良い意味で笑い系ゲームだからです。笑い系コンテンツは、テーマ、デザイン、所作、ルールなどの項目がすべてシュールであると繰り返し遊んでもらえなくなります。ゲームは何度も遊んでもらえないと寂しいものです。ひとつ「真剣さ」があることにより面白さが増すと思います。この作品で言うと、勝敗を本気で競い合わせることで、2戦目、3戦目をやりたくなるのかなと感じました。プレゼン動画は楽しそうに撮ってくれていましたが、ルールの明確な説明などももう少し整えて、多くの人に買ってほしいという意気込みも感じられると良かったかなと思います。
【2025年度 特別賞】ボマーに気をつけろさん
応募者名:ボマーに気をつけろさん
作品名:「マースボム」
学校名:学校法人 日本教育財団 HAL名古屋

作品の詳細:こちら
作品の解説動画:こちら
見た目にも面白そうなのと、ルールがわかりやすい点、短時間でも遊べる点がよかったです。
ゲームとしては、運要素が強すぎると感じました。プレイ順が早い人の近くに点数が高い家が配置され、サイコロの目が良いと、1ターン目で勝敗が見えて、4番目のプレイ順のプレイヤーからすると消化試合になりかねないと思います。やはり最後まで勝負がわからなく楽しめる逆転要素などは欲しい気がします。
ルールにも曖昧な箇所が見受けられました。サイコロの出目分同じマスを行ったり来たりして歩数を調整してもいいかどうか、や、他の人のコマと同じマスに止まってもいいかが正確に理解できず、爆弾カードの当たり判定も、どこをコマの位置として爆破できるマスを見ればいいかがわかりませんでした。ご本人方もプレゼン動画で今後の検討箇所を素直に報告してくれていましたが、現時点で自信あるベストルールを抜け漏れなく提示してほしかったです。最後に、「家を爆破する」というテーマが、人が住んでいる家をボマーが爆破しているのかもしれないという印象を与えてしまうと、世の中の誰かに不快感を与えてしまう恐れがあるので、ここの世界観説明も大切です。自信満々に世に出せなくなってしまうかもしれません。
例えばボンバーマンというファミコンの名作ゲームはロボットが壁などを破壊します。人同士を爆破し合うと説明して、例えば子どもたちなどが「えっ!」て思ってしまったりするともったいないですよね。
ストーリー設定としてみんなが納得して、爽快感があって、今の時代でも受け入れられるゲームだと素敵です。ファンタジーなのか、爆破によって何かを処理する社会貢献なのか……? 世界観設定を悔いなく作って、ゲームバランスを面白くしたら、充分商品化を目指せると思います!

無事にゲームアイデアコンテスト2025が終了しましたので、審査結果の発表をしていきます。